絵で見る脳と神経の病気 代表的な病気をわかりやすくご説明します

下垂体腫瘍

下垂体腫瘍が大きくなり、正常の下垂体を圧迫しその機能が低下すると、男では性欲低下やインポテンツなど、女性では月経不順、無月経など、その他疲れやすくなるなどの症状が出ます。

下垂体腫瘍が大きくなると、下垂体のすぐ上にある眼の神経を圧迫し、視界の外側が見えにくくなります。具体的には、赤信号で停止していたら後ろの車にクラクションを鳴らされ左上の信号を見たら青に変わっていた、最近人ごみの中で斜め前から来る人にぶつかるようになる、廊下に置いてある消火器につまずくなどです。極めてまれですが、突然の頭痛と両目の視力障害で発症するときがあり、これは下垂体腫瘍の中に出血することが原因です。この場合、くも膜下出血との鑑別が必要であり、下垂体腫瘍と出血の除去を緊急で行うことを考慮します。特定のホルモンをたくさん作る下垂体腫瘍では、各々のホルモンによって引き起こされる症状があります。

<下垂体腫瘍による視野障害>

松前光紀著「脳腫瘍の理解」クリニカルスタディvol.29,no.14,2008年 メヂカルフレンド社 イラスト:北原 功

まず、プロラクチン産生腫瘍では月経不順や無月経、さらに乳汁分泌を呈します。男性ですと性欲低下やインポテンツになります。女性の場合排卵障害の原因となりますので、不妊症の検査では必ず血液検査でこのプロラクチンが調べられます。一方男性では、なかなか症状に気がつかず、かなり大きくなってから発見される場合があります。ところが血液のプロラクチンが高いので下垂体腫瘍の検査を行ったところ、下垂体に異常を発見できない場合があります。この場合、高血圧の薬、胃薬、吐き気止め、ピル、精神科の薬、などの一部でプロラクチンの値を高める飲み薬がありますので注意が必要です。外来を受診される時にお薬手帳を持参してください、原因となる薬を他の薬に変更すれば問題ありません。

成長ホルモンをたくさん作る下垂体腫瘍では、子供と大人で症状が異なります。子供がこの病気になると身長や手足が必要以上に伸びます。この病気は巨人症と呼ばれます。成人になってからですと手足の先端や額、下顎、鼻、唇、舌などが肥大し先端巨大症と云われます。靴や指輪のサイズが合わなくなったとか、数年前に比べて顔つきがかなり変わったということからこの病気が発見される事がよくあります。また、糖尿病、高血圧などの原因となっている場合もあります。

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