絵で見る脳と神経の病気 代表的な病気をわかりやすくご説明します

頸動脈狭窄症

狭窄が強い場合は手術を行います

禁煙、運動・食事療法などに加え、高コレステール血症・高血圧・糖尿病に対するお薬による内科的治療が基本になります。さらに、血液を固めにくくすることで血液の流れを良くする抗血小板療法のお薬を、脳卒中予防のために追加することもあります。ほとんどの患者さんは、生活習慣の改善とお薬の治療で、脳卒中の防止を行います。しかし頚動脈の狭さが強い場合には、お薬の治療だけよりも、手術を行って狭い部分を改善させる方が脳卒中予防に良いとされています。

手術には頸動脈を開いて直接動脈硬化の塊を取り除く方法(頸動脈血栓内膜剥離術といいます)と、血管の中からカテーテルを使って狭窄を広げる方法(頸動脈ステント留置術といいます)の二つがあります。動脈硬化の状態や血管の状態、患者さんの全身状態や患者さんの希望などにより、どちらの手術を選ぶかを決定します。 脳卒中予防のために手術を行う基準は、以下のようになっています。頸動脈狭窄だけが発見され脳の症状がない場合は、頚動脈の狭い部分がもとの血管の径の20%より細い場合に、手術を行い頸動脈の病変を改善させることが脳卒中予防のために良いとされています。一方、脳梗塞などの脳の症状がある場合は、血管径の50%の狭さの病変でも、手術を行って脳卒中が悪化することを防止することが良いとされています。

頸動脈血栓内膜剥離術

頸動脈血栓内膜剥離術

頚部で頸動脈を露出、頸動脈を一時的に止めて、頸動脈を開いて動脈硬化の塊を取り出します。この手術は全身麻酔で行います。

頸動脈ステント留置術

頸動脈ステント留置術

股の付け根の血管(大腿動脈)にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これを頸動脈の細い場所に通します。ここで「バルーン」と呼ばれる風船をふくらませたり、網目状に血管の中で拡張し頸動脈の内側を適切な太さに保つ「ステント」とよばれる機器を、狭くなった頸動脈に挿入します。この手術は局所麻酔で意識のある状態で行います。

「頚部頸動脈狭窄症」は脳へ血液を流す血管の病気で、治療の目的は脳卒中の予防です。そのため適切な治療のためには、脳の機能を熟知した脳卒中専門医と脳神経血管内治療専門医による診断を受けることが重要です。東海大学病院脳神経外科では、患者さんにとって最善の治療をおすすめできるように、複数の脳卒中専門医と脳神経血管内治療専門医・指導医がそれぞれの患者さんについて検討をおこなっています。また、頸動脈に狭窄のあるかたは、他の血管にも狭窄を合併していることが少なくありません。当院では他の血管の病変を合併している場合は、循環器科などとも連携し、総合的に血管の治療を行っています。

「頸動脈狭窄症」の手術を行う場合の一般的な流れ

  1. 外来で、診察、頸動脈エコー、MRA、CT血管造影(注射をしながらCTを行う)、血液検査、心臓検査、ABI(手足の血管の狭窄を調べる検査)、脳血流検査を行います。
  2. 入院して、脳血管造影(カテーテル検査)を行います。
  3. 外来で手術について相談します。
  4. 入院して、手術を行います。順調な場合の入院期間は、「ステント留置術」は1週間くらい、「血栓内膜剥離術」は2週間くらいになります。

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