絵で見る脳と神経の病気 代表的な病気をわかりやすくご説明します

パーキンソン病

脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を受けるチャンス

脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を考える時期としては、パーキンソン病になって10年前後の時期が多い様です。脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を行う脳外科医は、70歳を超える患者さんでは、「薬の底上げ効果」が乏しく、手術の結果に満足していただけないことが多くなってくることを経験しています。したがって脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を受ける患者さんは、50歳代後半から60歳代の方にお勧めしています。

脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を受けることにより、薬の治療からある期間解放され「パーキンソン病になる前の自分を取り戻す」ことが理想であり目標です。若くしてパーキンソン病となり、早めに脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を選ばれた方の一部で、薬からまったく解放され、幸せな期間を楽しまれる方がいらっしゃいます。パーキンソン病の治療には、薬の効果がある「オン」の時間帯と、薬の効果が切れる「オフ」の時間帯があることを、薬の治療が始まって5年程度経過すると、患者さんはわかるようになります。

50歳代でパーキンソン症状が出現した方は、まずお薬の治療が始まります。その後60歳代で手術を受けられた多くの患者さんは、「オフ」の時間帯で脳手術(脳深部刺激療法/DBS)による症状の改善を実感されます。ただし「オン」の時間帯で、ここがもう少し軽くなればといった症状は、脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を受けても実感できないと話される患者さんもおります。一方、「オフ」の時にあるつらい症状のいくつかが、薬を飲んで「オン」になる時のように良くなると話される方もおります。ここで多くの方が気づかれたと思いますが、脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を受けてもまだ「オン」や「オフ」といった言葉が残っています。つまり多くの患者さんでは、薬の量や種類を減らすことに成功しても、お薬の治療が必要であることを理解してください。

パーキンソン病の治療では、「オフの時間帯に体が動かなくなって困る」といった訴えにかかりつけの先生は耳を傾けがちです。ところが、「勝手に体が動いて困る」といった訴えは、「動かなくなるよりまし」として注意を払わないことがある様です。この「勝手に体が動いて困る」の多くはジスキネジアと呼ばれ、パーキンソン病の治療薬との関係が知られています。ここでジスキネジアを軽くすることを目的とした、脳手術(脳深部刺激療法/DBS)についてお話します。ジスキネジアが重くなった患者さんでは、多くの治療薬を服用している状態となっているので、薬によるさらなる治療が難しい状態です。ジスキネジアが悪くなると、座っていられない、食事もとれないなどの状態となりますので、本人もつらいのですが、介護する側の負担もたいへんです。脳手術(脳深部刺激療法/DBS)は、薬を減らせる可能性があり、ジスキネジアを軽くすることが期待できる方法です。

このように脳手術(脳深部刺激療法/DBS)を、お薬を中心としたパーキンソン病の治療法に組み込むことにより、ご自身が持つパーキンソン病の自然経過とうまく付き合うことが期待されます。脳手術(脳深部刺激療法/DBS)で、病気とうまく付き合う期間を延ばし、将来実現されるであろう、新しい薬の恩恵や、原因に対する直接的な治療へつなげられることを目指していきましょう。

ただし、病気の進み具合と手術の効果には個人差があります。パーキンソン病すべての患者さんが、この図に示したとおりというわけではありません。多くの患者さんの今までを振り返り、このように分けて考えると理解しやすいと受け止めてください。このページをご覧になった方、それぞれ病気の進み具合は異なることを理解し、次のページに進んでください。

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