絵で見る脳と神経の病気 代表的な病気をわかりやすくご説明します

パーキンソン病

脳手術について詳しく

自分に意思に反して手足が震えてしまう(振戦)などといった不随意運動(ふずいいうんどう)は、脳の働きと深く関係します。

このような不随意運動の治療は、お薬の治療が基本ですが、長らくお薬を飲んでいると、薬の効果がうすれ、お薬の量や種類が増えたりします。そうすると、薬を飲む間隔が短くなったり、副作用が強く出てしまい思うようにお薬が飲めず、日常生活が障害される場合があります。だんだん世間の目が気になり、引きこもりがちとなります。

このような患者さんに光明を与える治療法が「脳深部刺激療法(DBS)」です。細かい手足の動きを制御している脳に、細い電極を入れ、神経に電気信号を送ることにより、脳から手足に伝わる電気信号を調律します。人間の体の中に電気信号を送る治療法は、心臓の調律が乱れる不整脈の治療法が有名で歴史もあります。心臓の治療を脳に応用したのが、脳深部刺激療法(DBS)です。脳深部刺激療法(DBS)は、効果が確立した治療法ですから、したがって健康保険で治療が受けられ、すでにわが国では2,500名以上の患者さんが受けています。(2006年現在)

脳深部刺激法(DBS)では、下の図に示したような装置を体の中に埋め込みます。

脳深部刺激療法(DBS)を受けた患者さん

世界中で30,000人以上の患者さんが、この治療を受けています。

脳深部刺激療法(DBS)の成績

80%の患者さんで、「刺激をしている間完全に振戦がとまる」、「日常生活に支障がない程度まで振戦が軽くなる」、「薬の量や種類を減らすことができた」、または「薬を飲む間隔が長くなり、薬をのむ回数が減った」などができました。この治療では、手術を受けた後、刺激の強さなどを調節することができるので、長い期間にわたり振戦を軽くすることができました。

パーキンソン病の症状に対する効果

また振戦だけではなく、パーキンソン病の患者さんに見られる固縮や歩行障害にもある程度効果があります。

さらに、薬の効果が悪くなる「オフ時」の引き上げや、お薬によるジスキネジア(不随意運動)の減少があり、その結果お薬の効きかたの波(日内変動)が和らぐことも期待できます。

お薬の副作用で悩んでいる患者さん 一度担当医にご相談ください

お薬の量や種類が増えて副作用が強く、お薬を十分に飲めない方、お薬を飲むとジスキネジアがおきてしまう方、一日に何度もお薬を分けて飲んでおられる方など、お薬の効果に不満のある方は、一度担当医に脳神経外科医へ紹介してもらえるかご相談ください。

脳深部刺激療法(DBS)の特徴

  1. 心臓のペースメーカーなどで実績のある治療器具が使われて、世界中で30,000以上の患者さんに埋め込まれ、日本でも多くの実績があります。

  2. 手術の後、パルス発生装置を体の外から調整して、患者さんの調子にあった神経の調律を回復させます。

  3. 刺激する場所も、手術後患者さんの調子を診ながら、体の外から細かく調節できます。

  4. 脳に埋め込む電極は細く、トレーニングを受けた専門医が行えば安全です。

  5. 電気刺激する場所は、細かな地図をコンピュータで確認し、神経の会話を手術中に聞きながら慎重に位置をきめます。

  6. お薬の副作用に悩んでいたり、お薬の効果に満足されていない患者さんに、新たな治療法として選んでいただけます。

  7. 健康保険で治療が受けられます。

脳深部刺激療法(DBS)を担当する脳神経外科医とよく相談して、治療の目標を決めてください

  1. 脳深部刺激療法(DBS)の効果は、L-ドーパなどのお薬の効果に良く似ており、お薬のきかない症状を良くしたり、お薬が効いている以上の効果は得られないことがあります。

  2. 脳深部刺激療法(DBS)は、全ての症状に効果があるわけではなく、すべての患者さんに同じような効果をあらわすわけではありません。

  3. 脳深部刺激療法(DBS)は、脳神経外科医が行う手術です。

  4. 手術には非常にまれですが、体にばい菌が入る感染症、埋め込んだ器具に対する拒絶反応、脳血管の障害(出血)、神経の機能障害などがあります。

  5. 手術による体の不具合は非常にまれです。手術前に脳神経外科医が、十分説明します。

脳深部刺激療法(DBS)はお薬と共に効果を発揮します

脳深部刺激療法(DBS)を行って、お薬の量や種類を減らせても、お薬をやめることはできません。脳深部刺激療法(DBS)は、お薬の治療と共に力を合わせてその効果を発揮します。

DBSの効果(イメージ)

DBSにより、「オフ時」、「ジスキネジア」を減少し、お薬の効き方の波を和らげることが期待されています。

脳手術(脳深部刺激療法/DBS)の副作用は

脳手術(脳深部刺激療法/DBS)には期待とともに、不安を抱く方が多いのも事実です。脳のあるきまった位置に電極を設置する技術は、古くからおこなわれている方法です。不安の一部は副作用と思います。特に手術を受けることによって、菌が脳の中に入ったり、出血すると重大な合併症となります。合併症の頻度は、外国と日本とで大きく異なりますので、手術を受ける前に詳しく説明を聞きましょう。

非常にまれですが、脳手術(脳深部刺激療法/DBS)の刺激を強くすると、「意欲のコントロール」がむずかしくなることが知られています。極端な場合、ギャンブルに熱中、インターネットショッピングに明け暮れる、性欲が我慢できない、過食からくる異常な体重増加などが知られています。この場合、神経内科の先生と脳外科の先生はお互い十分な連絡を取り、適切な脳刺激とお薬の調節を行い、症状の安定に努めています。

当然ですが、病気の進み具合、手術の効果、副作用の種類と程度には個人差があります。多くの患者さんの今までを振り返り、このように考えると理解しやすいと思いまとめてみました。

手術を検討されている患者さんに対して、我々神経内科と脳外は、これまで受けてきた治療を十分理解して、今後の治療法について考えます。

日本で行われる脳手術(脳深部刺激療法/DBS)は、多くの経験に基づいて行われていますので、お薬による治療法と同じように安心してお受けいただくことができます。

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