手術を行わない場合の内頚動脈起始部狭窄の内科的治療

担当:反町 隆俊(外来担当日 月曜)

内頚動脈起始部狭窄はMRIやエコーの普及により、見つかることが多くなりました。手術適応でない場合や、手術を希望しない場合の内科的治療は、血圧管理、禁煙、糖尿病と高コレステロール血症の厳格な管理が必要です。

1. 手術適応と検査

内頚動脈起始部狭窄症は脳梗塞の原因になるため、手術の適応になることがあります。脳卒中治療ガイドライン2015では、症候性で60%以上、無症候性で70%以上の狭窄率で手術を検討することになっています。

狭窄率は内頚動脈の最も太い直径に比べた最も細い直径の割合を用います(NASCET法: North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial)。エコーやMRAでは狭窄率が高く出やすいため注意が必要で、治療適応はカテーテル脳血管造影で判断します。最近は内科的治療の進歩により再発予防効果が高くなっています。手術は重篤な合併症リスクが3%程度あるため、手術適応はより慎重になっています。最近の傾向は、脳血流低下をきたすほどの狭窄か、狭窄が進行性の場合に手術治療を行うようになっています。

2. 手術方法

手術治療には、頚部を切開する血栓内膜剥離術とカテーテルによる頚動脈ステント留置術があります。いずれの手術も難易度は高くありませんが、正確な手術を行っても重篤な合併症を完全に避けることはできないため、手術適応は慎重に検討するべきです。

3. 内科的治療

内科的治療の進歩を示すものとして、大規模studyにおける無症候性内頚動脈中等度狭窄の1年間の脳梗塞出現率の変化があります。1993‐1995年の報告(VACS, ACAS, ECSTの3study)では2.3‐2.4%/年でしたが、2005‐2007年(ACSRS, ASED, SMART)では0.6‐1.3%/年に減少しています。

血圧

脳卒中治療ガイドラインでは虚血性脳血管障害の降圧目標は140/90mmHg未満、糖尿病やラクナ梗塞、抗血栓薬内服例では130/80mmHg未満が推奨されています。

脂質管理

LDLコレステロールは100mg/dL以下で脳卒中発症が少ないという報告があります(J‐STAR: Hosomi N, et al. Stroke 49 865‐871, 2018)。また、80mg/dL未満になるとプラーク退縮が認めれたという報告もあります(Tsujita K, et al. J AmColl Cardiol66 495‐507, 2015)。我々はスタチンを使用しLDLコレステロール100mg/dL以下を目標にしています。

禁煙と運動

禁煙と有酸素運動を進めます。我々の経験では、喫煙者では内頚動脈狭窄が進行することが多く、また女性の内頚動脈狭窄の多くが喫煙者です。

抗血小板療法

症候性狭窄は抗血小板剤を用います。無症候性では脳卒中治療ガイドラインでは中等度以上の狭窄に対し抗血小板療法を考慮しても良いとされています。我々は、無症候の場合でも高度狭窄例、中等度狭窄でプラークの不安定性がある場合、狭窄の進行例、全身的な動脈硬化症例などに対し、MRI/T2*での微小出血の有無など考慮しながら抗血小板剤を選択しています。

4. 画像 follow

狭窄の程度により、3ヶ月から1年ごとにMRAを行います。進行した場合は、その都度適応を検討します。

5. ご紹介いただく場合

東海大学では、神経内科と合同の検討会で内科的立場と外科的立場から、症例ごとに治療方針を決定しています。どのような患者さんでもご紹介いただければ、最善と思われる治療方針についてご報告させていただきます。

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