脳卒中の再発予防ー脳卒中治療ガイドライン追補 2019から

担当:反町 隆俊(外来担当日 月曜)

2019年11月に発行された脳卒中治療ガイドライン 2019年の追補で、2015年のガイドラインから変更のあった部分を中心に、脳卒中再発予防についてお伝えいたします。

1. 脳梗塞慢性期

高血圧管理

高血圧は脳梗塞発症の最大の危険因子であり、再発予防に高血圧管理は非常に重要です。血圧コントロール目標値は、日本高血圧学会の指針変更と同様に140/90mmHgから130/80mmHgに下げられました。以下が推奨の抜粋です。

  • ラクナ梗塞、抗血栓薬内服中では、血圧は130/80mmHg未満を目指すことを考慮しても良い。
  • 両側頚動脈高度狭窄や主幹動脈閉塞がある例、血管未評価例では、血圧は140/90mmHg未満を目指すことを考慮しても良い。

脳梗塞の血圧管理には、MRAなどによる主幹動脈評価が重要です。

主幹動脈狭窄や閉塞により灌流障害がある場合は、収縮期血圧低下により灌流障害が悪化し、脳卒中再発が増加するという報告があります(Ovbiagele B. et al. J Stroke Cerebrovasc Dis 2013;22:633, Yamauchi H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2013;84:1226)。再発予防の血圧管理には、頚部を含めたMRAなどによる脳血管の評価も重要です。

血糖管理

糖尿病は脳梗塞発症リスクを高める危険因子です。血糖コントロールによる脳卒中発症抑制のエビデンスは、まだ多くはありませんが、ピオグリタゾン(アクトス等)治療のランダマイズ研究が脳卒中を有意に抑制したため(PROactive study, Dormandy JA. Lancet 2005;366:1279)、以下のような推奨になっています。

  • 血糖コントロールを考慮しても良い。
  • ビオグリタゾンによる治療を考慮しても良い。

脂質管理、禁煙と運動

これに関しては特に追記はありませんでした。

抗血小板療法

脳梗塞発症の急性期は抗血小板薬2剤併用が勧められます。しかし、2剤併用の継続、特にアスピリンとクロピドグレル併用は出血合併症が問題になります。これらについては、以下のような推奨になっています。

  • 非心原生脳梗塞の再発予防には、抗血小板薬の投与を行うよう強く勧められる。 ラクナ梗塞の再発予防にも抗血小板薬の治療が勧められる。ただし十分な血圧コントロールが必要である。
  • 1年間以上の抗血小板薬2剤の併用は行わないよう勧められる。
  • 抗血小板薬の頭蓋内出血を予防するために、収縮期血圧130mmHg未満に管理することが根拠は不十分ではあるが、勧められる。

他に、抗血小板薬内服中の処置についての記載があります。出血高危険度の消化器内視鏡では、アスピリン以外の抗血小板薬は休薬を原則とし、クロピドグレルは5-7日間、それ以外は1日間の休薬とします。血栓塞栓症の発症リスクが高い場合は、アスピリンまたはシロスタゾールへの置換を考慮することになります。歯科治療と、消化器内視鏡治療は各々のガイドラインがあるため、具体的にはそれらを参照することになります。

2. 高血圧性脳出血慢性期

MRIのT2*画像で検出されるmicrobleeds(微小出血)の重要性が注目されています。特に抗血小板薬やワルファリン服用患者ではmicrobleedsが多く認められるため、注意を要します(Lovelock CE, Sorimachi T, et al. Stroke 2010;41:1222)。以下が、推奨の抜粋です。

  • 血圧は130/80mmHg未満が降圧目標に勧められる。
    特に、microbleeds合併例ではより厳格な血圧コントロールを考慮しても良い 。

MRI T2*のmicrobleeds(微小出血)と脳内出血。

多数のmicrobleedsが黒い点状に見えます。

脳内出血患者では、血圧管理のためにもMRI T2*画像撮影が重要です。

3. ご紹介いただく場合

東海大学では、脳卒中症例は、神経内科と合同の検討会で内科的立場と外科的立場から、症例ごとに治療方針を決定しています。ご紹介いただければ、最善と思われる治療方針についてご報告させていただきます。

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