絵で見る脳と神経の病気 代表的な病気をわかりやすくご説明します

転移性脳腫瘍

がんの脳転移は、原因となるがんの経過として最後の頃に現れ、あまり良い経過ではありません。治療は現在の生活レベルを向上させる、あるいは悪化させないことを主眼に行われます。

けいれん発作で発症した患者さんにはけいれん止めの薬を飲んでいただきます。そのほか転移してきたがん細胞の周りの脳は、大変むくみが強くなりますので、このむくみをおさえる「ステロイド」や「利尿剤」と呼ばれる薬が、点滴か飲み薬として投与されます。

その他の治療は、原因となるがんの状態で方針が分かれます。原因となったがんの状態で予想される生存期間が6ヶ月以上の場合と、それ以下が分かれ目となります。

  1. 予想される生存期間が6ヶ月以上の場合で、頭に発見された病変が一ヶ所の場合、開頭手術+脳全体への放射線照射、またはガンマナイフおよびサイバーナイフの放射線治療

    <サイバーナイフ>

    ロボットアームについた器具が、頭の周りを回転して、病変に対し様々な方向から放射線を照射する。

    松前光紀著「脳腫瘍の理解」クリニカルスタディvol.29,no.14,2008年 メヂカルフレンド社 イラスト:北原 功

  2. 予想される生存期間が6ヶ月以上の場合で、頭に発見された病変が二ヶ所以上でも、おなじ場所から手術が行えると判断された場合、開頭手術+脳全体への放射線照射

  3. 予想される生存期間が6ヶ月以上の場合で、頭に発見された病変が多数ある場合、脳全体への放射線治療

  4. 予想される生存期間が6ヶ月以上の場合で、頭に発見された病変が複数ある場合、大きさが3cm以下の病変にはガンマナイフおよびサイバーナイフの放射線治療と、脳全体への放射線治療

  5. 生活レベルを著しく障害している病変が手術可能な場所にあり、これを取り去ることにより、一時的であるにせよ患者さんの生活が劇的に改善することが期待され、患者さんとご家族が強く手術を希望する場合、手術を考慮

  6. 予想される生存期間が6ヶ月以内の場合は、患者さんの状況に応じた複雑な判断が必要です。

転移性脳腫瘍は、原因となるがんを専門的に治療する専門医、放射線治療医、化学療法専門医、そして脳神経外科専門医の強い連携が必要です。がんの状態や、患者さんの社会的背景、患者さんの人生観など、総合的に判断するため担当医と十分に相談する必要があります。

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